お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
 ***

 部屋の中にアラームの音が鳴り響いて、手探りでそれを止める。どうやら朝が来たようだ。

「会社行きたくないなぁ……」

 大きな溜息と共に本音が漏れ出る。なんとか体を起こしたが、あの夢のせいでいまいち眠れなかったせいか体が重い。瑞希は低い声で唸り、再度ベッドに倒れ込んだ。

「うう……」

 眠れない間は今後のことを真剣に考えていた。悪夢を見るくらいなら――露口にもう一度きっぱりと断るか、それともこのまま別人のふりをしてやり過ごすか。悩みすぎて悩みすぎて、気がつけばもう朝だ。

(パパに断ってと頼んでおいたけど信用できないのよね……。でももう一度お見合いした時の恰好で断りに行くのはちょっと……)

「もう悩むのも面倒だし、いっそ私がお見合いした相手ですってバラしてきっぱり断る?」

 いや無理だ。社長である彼の気分を害せばクビにされるかもしれない。それは困る。会社にも研究者としての自分を認めてもらえて、これからという時に辞めさせられるのは嫌だ。

 ああでもない、こうでもないと葛藤した末に結局何も決められずに、今日もメイクをせずに出勤した。髪だけは仕事の邪魔にならないように、コームで結い上げる。
< 15 / 118 >

この作品をシェア

pagetop