お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「承知しました。では、まず原田瑞希さんからOKの返事をもらってきてください。できればすぐに」
「すぐには無理だ。一度断られているんだぞ。仕事と同じで、焦らず長期的に構えたほうが良い結果を生み出しやすい。だからもう少し待ってくれ」
「いえ、待てません。今朝、会長からご連絡がありました。一週間以内に色好い返事がもらえなければ時間の無駄なので、また見合いをしろと……」
「……そうか」

 ニコリと微笑み平静を装いながら、心の中で舌打ちをする。

 会社を任されるにあたって古い体制を変えたいと考えた。が、父は変化を嫌った。かなり揉めたせいで、正直親子仲はよくない。いや、とても悪い。

 そこまで会社のことを思うなら利益になる家の令嬢と結婚しろとは言うが、父が見つけてくる相手は高飛車で驕慢なお嬢様ばかり……

 単純に嫌がらせがしたいのだ、あの人は。

(働かず親のカードで好き放題遊びまわっている人と結婚しても会社のためになるとは思わないのだが……)

 でも、今回は違う。先方からの申し出だったこともあるのだろうが、初めて普通の――いや、とても好感がもてる女性だったのだ。彼女でなければ嫌だとさえ思った。


(さてどうしたものか……)

 強硬手段に出れば、瑞希に自分が見合い相手だと自白させることは可能だろう。だが、そうすれば彼女は康弘を嫌うかもしれない。

 始まりは見合いでも、できることなら心を通わせたいのにそれではいけない。瑞希も納得したうえでなければ……

「……分かった。至急、何かいい手を考えておく」

 今は仕事が楽しい時期だろうし、結婚を邪魔に思っているのだろう。むしろキャリアを傷つけると考えているのかもしれない。

(ならば、まずその不安を取り除いてやるのが先か……)
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