お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
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「原田さん、おはようございます」
「おはようございます」

 露口と会社の前でばったりと会って、にこやかに挨拶を交わす。

 見合いの日から数日が経ち、彼とは社内で顔を合わせれば普通に挨拶をするようになった。
 桜井から露口の話を聞けたのと、露口本人が見合いの件に触れてこないのが大きいのだろうが、近頃怖さや警戒心が薄れてきているようにも思う。

(慣れって恐ろしいわね……)

 というより、最近よく見る夢のせいが一番大きい気もする。彼は甘く迫ってくる時もあれば、普通にお話をしたりデートを楽しむ時もあったりして、正直なところ最近脳がバグりつつある。

(夢の中だと恋人同士なせいか、夢と(うつつ)の区別がつかなくなってきそうで怖いわ……)


「原田さんはいつも早いですね」
「社長だって早いじゃないですか。いつもお疲れさまです」

 夢のことを考えていた心の内を隠して平然を装いぺこりと頭を下げると、彼が嬉しそうに笑う。その表情が一瞬可愛く見えて、瑞希は驚きと共に自分の頬を叩いた。

(やだもう。今は現実なのよ。しっかりして!)

 だが、綺麗に整えられた黒髪に意志の強そうな瞳。その上すらりとして長身で、均整の取れた体躯。とてもかっこよくて、やはり瑞希好みだ。夢の中で、この力強い腕に何度抱き締められたか……
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