お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「ちょっと失礼します……。お手洗いに……」
瑞希は誤魔化すように笑いながら立ち上がり化粧室へ逃げた。
中に駆け込むなり父に抗議の電話をかける。すると、数コールしたのちに父が電話に出た。
『パパ! 一体何を考えてるのよ!』
『何がだ? それよりもう終わったのか? 早すぎないか?』
『まだ終わってないわよ。どうしてお見合いの相手がうちの社長なのよ! あり得ないでしょう!』
『なんだそんなことか。あり得ないことはない。瑞希は薬の研究がすごく好きじゃないか。彼も仕事好きだと有名だから合うはずだ……。それに同じ会社なら話すこともたくさんあって盛り上がるんじゃないか?』
気がきくだろうと笑う父に、今日一げんなりする。
同じ会社といっても同僚とはわけが違う。雇い主と何を話せと言うのか……。見合いではなく面談の間違いじゃないのかと、瑞希は心で泣いた。
『……社長にどこまで話したの? 私の仕事のこと言ってないよね?』
『瑞希が創薬研究者として働いていることは言ったが、勤務先のことは言っていない。話のタネになると思って黙っていたんだ。きっと驚いて話も盛り上がるに違いない』
『そんなわけないじゃない! 頭に花でも咲いてるの?』
大きな溜息をついて電話を切る。泣きたい。瑞希はきゅっと唇を引き結んで鏡に映る自分の姿を見つめた。
今日はいつもとは違い、お見合い仕様だ。セミロングの髪を美容院でアップスタイルにしてもらい、メイクも華やかにしてもらった。万が一、会社で普段の瑞希と会っても彼が気づくことはないはずだ。
「念のためにメイクをもっと濃くしとこうかしら」
勤務先がバレていないなら、このままやり過ごせばいい。
(きっぱり断れば大丈夫よね……。私、政略結婚じゃなくて恋愛結婚したいんですとか言って……)
そこまで考えて歯噛みした。
恋愛なんて絶対にしたくない。もう二度としないと決めたのだ。嘘でもそんなことを言わなければならないと思うとしんどいが、背に腹はかえられない。
瑞希は両頬を叩き気合を入れ直してからメイク直しをし、露口のもとへ戻った。
瑞希は誤魔化すように笑いながら立ち上がり化粧室へ逃げた。
中に駆け込むなり父に抗議の電話をかける。すると、数コールしたのちに父が電話に出た。
『パパ! 一体何を考えてるのよ!』
『何がだ? それよりもう終わったのか? 早すぎないか?』
『まだ終わってないわよ。どうしてお見合いの相手がうちの社長なのよ! あり得ないでしょう!』
『なんだそんなことか。あり得ないことはない。瑞希は薬の研究がすごく好きじゃないか。彼も仕事好きだと有名だから合うはずだ……。それに同じ会社なら話すこともたくさんあって盛り上がるんじゃないか?』
気がきくだろうと笑う父に、今日一げんなりする。
同じ会社といっても同僚とはわけが違う。雇い主と何を話せと言うのか……。見合いではなく面談の間違いじゃないのかと、瑞希は心で泣いた。
『……社長にどこまで話したの? 私の仕事のこと言ってないよね?』
『瑞希が創薬研究者として働いていることは言ったが、勤務先のことは言っていない。話のタネになると思って黙っていたんだ。きっと驚いて話も盛り上がるに違いない』
『そんなわけないじゃない! 頭に花でも咲いてるの?』
大きな溜息をついて電話を切る。泣きたい。瑞希はきゅっと唇を引き結んで鏡に映る自分の姿を見つめた。
今日はいつもとは違い、お見合い仕様だ。セミロングの髪を美容院でアップスタイルにしてもらい、メイクも華やかにしてもらった。万が一、会社で普段の瑞希と会っても彼が気づくことはないはずだ。
「念のためにメイクをもっと濃くしとこうかしら」
勤務先がバレていないなら、このままやり過ごせばいい。
(きっぱり断れば大丈夫よね……。私、政略結婚じゃなくて恋愛結婚したいんですとか言って……)
そこまで考えて歯噛みした。
恋愛なんて絶対にしたくない。もう二度としないと決めたのだ。嘘でもそんなことを言わなければならないと思うとしんどいが、背に腹はかえられない。
瑞希は両頬を叩き気合を入れ直してからメイク直しをし、露口のもとへ戻った。