お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「それにしても化粧品部門がある会社で働いてるとお得よね。たまにこうやってモニターさせてもらえるし、サンプルももらえるし。私、この会社で働くようになってから自分で化粧品を買う頻度がかなり減ったわ」
「うふふ、喜んでもらえて研究員冥利に尽きます。私たちも生の声が聞けて、とても助かっているのでサンプルくらいならいつでもどうぞ」

(発売前に試させてもらえるのは嬉しいわよね。社割も使えてお得に買えるし)

 学生の時は勉強や研究に明け暮れていて、あまりメイクに興味がなかったが就職して化粧品部門の人たちと関わるようになってから考えが変わった。

 医薬品に使われているものは化粧品にも使われている。自分が探索、創出した新規化学物質が手の離れたところで医薬品とは違う形になっているのを見れば感慨一入(ひとしお)で、興味を持たないわけがない。

(それは逆も然りよね。研究内容は違えど相互関連性があって、助け合えてる。とても楽しいわ)

 念入りにスキンケアをしながらうんうんと頷いていると、天崎がメイクアップ商品を選びながら瑞希の頬をつついた。

「そういえば原田さんは今日すっぴんなんですね。びっくりしちゃいました。わざわざ落としてから来てくれたんですか?」
「違う違う。今日だけじゃなくて最近ずっとメイクしてないのよ、この子」
「え~、どうしてですか?」

 彼女の純粋な疑問にあははと笑う。なぜと言われても困る。
< 30 / 118 >

この作品をシェア

pagetop