お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「もしかして、肌荒れをしていてメイクできないんですか?」
「え……そ、そういうわけじゃ……」

 すぐに否定したのに、天崎が同情めいた視線を送ってくる。本当にどうして彼女の中で瑞希の肌が弱いことになっているのだろうか。

(私の肌、そんなに駄目? 少しメイクしないうちに荒れちゃったのかな?)

 急に心配になって鏡と睨めっこする。もう少し保湿クリームを塗り込もうとしたところで、天崎に止められた。

「何事にも適量というものがあるので、たくさん塗り込めばいいってものじゃないです。ちょっと見せてください」
「ねぇ、かおり。久しぶりにメイクしてあげてよ。いいメイクアップ商品が揃ってるんでしょ」
「ええ、いいですよ。今のところ、肌も大丈夫そうだし問題もないと思います。しばらく肌を休ませているうちに治ったんでしょうね」
「そっか……良かった……。荒れてないのね」
「今回の商品は本当にお肌に優しいから、ばっちりメイクをして久しぶりにおしゃれしましょう!」

 天崎が任せてと胸をドンと叩く。親身になってくれる彼女に、試したらすぐ落としたいとは言えずに、半ばやけくそに笑う。

(い、いつもは新商品を使った状態で日中を過ごして、夜メイクオフした時の落ちやすさとか肌の状態まで報告してるものね……困ったな)

 瑞希は終業時間まで、どうやって露口に会わずしてやり過ごすかをシミュレーションした。
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