お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

君の未来をくれないか?

 この場から逃げてしまいたいが動くこともできず、かと言って露口と向き合うこともできずに、彼に背を向けたまま大人しく髪を巻かれていると、彼がくつくつと笑う。

「冗談ですよ。そんなことしません。原田さん、とりあえず座りませんか? 話したいこともあるので」
「……わ、私はありません」
「俺はあるんです」

 きっぱりと言われて、体が強張る。

(話したいことって、やっぱりお見合いのことよね? 今までどうして隠してたんだって追及されるのかな……。でも私は最初から結婚なんてするつもりなかったから……。ちゃんと断ったし)

 バレてどうしようという気持ちと何て言い訳をしようという気持ちが、綯い交ぜになる。何も答えられずに無言で椅子に座り直すと、露口がまた瑞希の髪に触れる。彼は慣れた手つきで髪を巻いていった。
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