お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「原田さんはやはり可愛いですね。そういう反応をされると、つい揶揄いたくなってしまうのですが……」
「そ、そういう反応って?」
「それは貴方が一番ご存知なのでは?」
「う……」

 もうバレていることを悟り、白衣の裾をぎゅっと掴む。

(いつからバレてたんだろう。まさか最初から?)

 変な汗が出てくる。瑞希が体を強張らせていると、彼がまた「可愛いな」と笑う。

「貴方がなぜ隠そうとしているのかは分かりませんが、別に怒ったりしませんよ。貴方が俺と見合いをした原田瑞希さんであってもなくてもどちらでも構わないので」
「じゃ、じゃあ、どうして?」

 驚きのあまり振り返ってしまうと、彼の真摯な目とかち合う。慌てて顔の向きを戻すと、頭上から彼の笑い声が聞こえてきた。

「貴方と交わす挨拶や話が楽しいからというのが、答えだったらいけませんか? 見合い相手だから最初は気になった――というのは否定しませんが、今となってはそれは動機にすぎません。俺は貴方自身が気に入ったんです。たとえ今本物の原田瑞希さんが俺の前に現れたとしても、俺の原田瑞希さんは今目の前にいる貴方です」

 てっきり見合いのことを責められると思っていたのに、思いがけない彼の言葉の数々に唖然となる。瑞希がおずおずと振り返ると、いつもの柔らかい表情で笑いかけてくれる。
< 36 / 118 >

この作品をシェア

pagetop