お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「待たせてごめんなさい」
「いえ……」

 お茶を飲んでいるだけなのに、大人の落ち着きを感じる。大会社の社長とあって、所作ひとつにしても美しく、育ちの良さが垣間見える。

(確か、社長って三十歳だっけ……)

 自分は二十八歳なので、釣り合いが取れる年齢ではある。我が家は食品をメインに、一般用医薬品の製造や販売もしているので、この結婚で生まれる会社間のメリットもなんとなくだが理解はできる。

(心配だ心配だと言いながら、がっつり政略結婚じゃないのよ。パパの馬鹿)

 両親の涙を信じて、つい了承してしまったチョロい自分がほとほと嫌になった。


「あの……露口さん……」
「何ですか?」
「お忙しいでしょうし、単刀直入に言いますね。このお話はなかったことにしていただけませんか?」
「なぜ?」
「なぜって当たり前でしょう。政略結婚だなんて絶対に嫌なんです。わ、私は運命の人と運命的な出会いをして恋がしたいの」

 机の下でスカートをぎゅっと握りしめ、挑むように言い尽くすと、彼が鼻で笑った。

「やけに運命にこだわるんですね。ではある種、これも運命的な出会いでは?」

(どこがよ……)

 彼の返答にムッとして分かりやすく大きな溜息をつく。

「……分かり合えないようなので、もう帰ります。私、お見合いなんて時間の無駄なこと大嫌いなんです」

 話し合うことを諦めて瑞希が立ち上がると、彼に手首を掴まれる。振り払うと、また笑われた。

「奇遇ですね。俺も無駄は嫌いです」
「な、なら……」

 同じ意見だということが分かり露口の言葉に前のめりになると、彼が「では結婚を前提にお付き合いしましょう」と言った。
< 4 / 118 >

この作品をシェア

pagetop