お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「なら、俺に一年ください」
「一年?」
「研究開発という仕事は長期的な視野が必要だ。それは俺たちの関係にも言えます。一年――俺にできる精一杯で貴方を愛します。なので、一年経った時にこのまま俺といても悪くないと思えたなら結婚してください。でももし気持ちが変わらないようであれば、貴方を解放します」

(えっと……)

 確かに研究というものは長期的に向き合わなければならない。早期で結果を得ようとしても失敗するだけだ。

 研究に喩えられたせいか、妙に納得してしまって嫌だと言えなくなり、瑞希はうーんと唸った。それに何より最近よく見る夢が嫌だと言わせてくれないのだ。

 瑞希が考え込むと、露口が髪にキスを落とす。体をびくつかせると、ゆっくりと彼の顔が耳に近づいてくる。

「頼む。俺に君の未来をくれないか?」
「~~~っ!」

 掠れた声でいつもとは違う口調で囁かれて、瑞希はボンッと頭から湯気が立った。

「そ、その言い方はずるいです……社長、自分がかっこいいの分かってやっているでしょ」
「社長じゃありません。康弘。名前で呼んで」
「や、康弘さん……」
「いい子ですね。では、瑞希。返事は?」

 とても真剣な眼差しに射貫かれる。
 しれっと呼び捨てで呼んでくる夢と同じ彼に文句を言うこともできずに瑞希は真っ赤な顔で何度か口をパクパクさせたあと、消え入りそうな声で「はい……」と答えた。
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