お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「その件は原田社長から、すでに聞いています。そのうえで話し合い、俺にすべてを任せるという言葉をいただきました」
「え?」
「瑞希さんが人生を仕事に捧げるつもりなのが心配でたまらないと仰っていました。できれば頑なな心を溶かしてやってほしいと……」
「そうだったんですね……」

(パパ……)

 父の想いに瞳の奥が熱くなる。
 一向に立ち直れない弱い自分のせいで二人にはすごく心配をかけた。見合いをする前に、人を好きになることを諦めないでと泣いた両親の顔を思い出して、ちらっと康弘を見る。

 最初は彼の噂を信じてビビッていたが、今なら分かる。社長として自社の研究員への仕事内容に対しての理解と把握がある康弘ならば、創薬研究者としての瑞希を否定することはしないだろう。

(パパたち、私を任せられる人を必死に探してくれたのよね……)

「でも自棄になっているからとかじゃなく、人生を捧げてもいいくらいこの仕事が好きなんですよ」
「もちろんそれは分かっています。好きなことを直向きに頑張る貴方はとても魅力的なので、今後は社長としても婚約者としてもサポートさせてください」
「ありがとうございます」

 理解を示してもらえたことが嬉しくてはにかむように笑うと、彼が瑞希の頬に触れた。そしてその手をするりと滑らせて後頭部にまわす。
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