お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「康弘さん?」

 スッと細まった彼の目に食べられてしまいそうで、急に焦りが出てくる。瑞希が不安げに彼を見ると、彼の顔がゆっくりと近づいてきた。

「愛を育みたいと言った中にはこういうことも含まれているのですがよろしいでしょうか?」

(え?)

 そう言った彼の唇が瑞希の唇に重なった。それは一瞬だけの触れ合いだったが、しっとりとした熱が嫌でもキスをしたのだと自覚させる。

「~~~っ!」
「瑞希。今夜にでもうちに引っ越してきなさい。一緒に暮らしましょう」
「へ?」
「俺たちは忙しい。一年間を無駄に過ごさないためにも自発的にお互いの時間を持つことは大切です。なので、同棲しませんか?」

 今キスをしてきた相手と……愛を育みたいと言った相手と……一緒に住む?

(そ、それってつまり……エッチもするってことよね? で、でも、夢の中でさえいつも未遂なのに……)

 瑞希は目を大きく見開いたまま硬直した。頭の中は同棲生活を想像して大混乱だ。

「い、言っていることは理解できますけど……同棲はちょっとキャパオーバーというか……無理です」
「ですが、どうせ結婚したら一緒に住むんですよ。その時も同じことを言うんですか?」
「それは……」
「この一年は貴方に俺を好きになってもらう試用期間でもありますが、結婚へのシミュレーションでもあります。なので、努力をしないできないは禁止です」

(そ、そんな……)

 きっぱりと言い切られて何も言い返せなくなる。命じられると反論できないところがやはり部下としての(さが)なのだなと心で泣いた。

(こ、この一年でなんでも言い返せるようにならなきゃ)
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