お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「瑞希……」

 心を奮い立たせていると、彼がまたキスをしてこようとする。要求を通したい時は呼び捨になるということをなんとなく掴み取り、瑞希は両手で彼の唇を塞いだ。

(ちゃんと言わなきゃ。少なくとも一年間は恋人なんだから……上司と部下じゃないんだから……)

 好き放題にはさせないんだからと、キッと康弘を睨みつける。

「そ、そういうことは両親への挨拶が終わって、一緒に住む許可を得てからです。や、康弘さんだって頑張って我慢してください! 私だって努力をするんだから康弘さんもしてくれなきゃフェアじゃありません」
「その件はご心配なく。先ほども言ったとおり、原田社長からこの件をすべて任せられています。瑞希さんが頷けば万事抜かりなく事が進むようにしてあるので、安心してください」
「は? え……嘘」
「嘘ではありません。事前の根回しは交渉術の基本ですよ」

 そう言って笑った康弘の表情に、知らぬうちに父親と共謀されていたことに気づいて瑞希は愕然とした。
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