お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

親友への報告

「それで観念したと……。へえ、あんなに嫌がっていたのに結構呆気なかったわね」
「うるさいな……だって仕方ないでしょ」

 仕事後、会社から数駅離れたダイニングバーで、美味しい食事とお酒を楽しみながら知紗に報告をすると、彼女が得意げに笑う。さも予想どおりになったという顔をしている彼女をジト目で睨みながら、グラスに注がれたワインを一口飲んだ。

「まあ社長、あんたには甘々だもんね。構いたいオーラがびしびし出てるし。いいんじゃないの? 社長なら瑞希を幸せにしてくれるわよ」
「そ、そうかな?」
「うん」

 断言されて少し照れてしまう。瑞希は頬を染めて、目を伏せた。

(康弘さんったらそんなに分かりやすく態度に出してたんだ……。まあ天崎さんに協力を依頼するくらいだから最初から隠すつもりないんだろうな)

 知らぬ間に同僚を抱き込まれていたことを思い出し、苦々しく笑う。


「……ありがとう。まだ戸惑うことも多いけど歩み寄れるように頑張ってみようかなと思う。なんでもやってみないと分からないものね……」

 だが、今夜にでも引っ越してこいは承服しかねるものがある。なので、終業時間と共に知紗を連れて会社から逃げたのだ。

(康弘さん、押しが強いからあまり流されないように気をつけなきゃ。負けちゃ駄目よ、私)

 ちらりとスマートフォンを見る。
 先ほどから何度も電話が鳴っているのをみるに、康弘に逃げたことがバレたのだと思う。瑞希はそっと電源を落とした。


「あんたが前を向く気になって良かったわ。それだけでも社長には感謝ね」
「うん。今まで心配かけてごめんね」
「いいのよ、さあ飲もう」

 知紗がグラスを掲げたのでカチンと合わせる。そのままグイッと呷るように飲み干した。
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