お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「ちょっと。一杯目から飛ばしすぎよ。大丈夫なの?」
「明日は休みだから大丈夫よ」

 心配してくれる知紗にニコリと笑って、空になったグラスに再度ワインを注ぐ。

 康弘と交際することに異議はないが、父の対応には気に入らないものがある。正直なところ、飲まないとやってられないのだ。

「実はね、あのあとパパに報告の電話をしたんだけど……あの人、裏で康弘さんと共謀してたのよ。信じられる?」
「え……そうなの? あ、でもそれだけお見合いを成功させたかったのかしら。ま、まあ結果的に付き合うことになったんだから別にいいじゃないの」
「それはそうだけど……自分の知らないところで勝手に画策されてるのは気分が悪いのよ。心配してくれているのも分かるし、色々考えてくれているのも分かっているんだけど……」

 康弘にすべてを任せたということには納得がいかないし、同棲も許さないでほしかった。だが、父は抗議した娘に対し『もう二十八歳なのだから、それくらい当人同士で決められるだろう』と言い放ったのだ。

 間違えてはいないが、ムカつくものはムカつくのだ。
 瑞希が再び呷るようにお酒を飲むと、それを見ていた知紗が小さく息をつく。

「まあ最近変化が目紛しいものね。受け入れることを決めたからって不満がないわけじゃないか……。よし今日は飲もう! ここ、ワインのほかにカクテルもすごく美味しいのよ。お父様のことや社長のことは、また明日考えればいいわ」
「そうね、そうする」

(今は何もかも忘れていっぱい飲んで食べよう。いつから同棲するとかは、また後日話し合えばいいや)

 知紗が渡してくれたメニューを見ながら、二人でわいわいとカクテルを選んだ。
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