お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「瑞希さんも帰りましょう。立てますか?」
「……どうしてここにいるんですか? ここ会社から少し離れてるのに……」
「相馬さんから瑞希さんがとても酔っていて手に負えないから迎えに来てほしいと連絡をいただきました」

 そういえば知紗がそんなことを言っていた気がするなと、ぼんやり考えながらふらつく足で立ち上がった。

「そうですか。でも私、まだ帰りたくないので……」

 支えてくれる康弘を押しのけようとしたが、力が入らずに転びそうになった。が、すぐに手が伸びてきて抱きとめてくれる。そして宥められながら、康弘に車に乗せられた。


 瑞希が駄々を捏ねても彼は気にとめずシートベルトを止め、ミネラルウォーターを手渡してくる。よく冷えたペットボトルをぎゅっと掴みながら俯いた。

「水を飲んでください。もし気持ちが悪いなどありましたら、遠慮なく言ってくださいね」
「……私みたいな酔っ払いを車に乗せて、もし吐いちゃったりしたらどうするんですか? 責任取れませんよ」
「別に構いませんので辛いなら我慢しないでください」
「で、でも……」

 ごにょごにょと口籠もっている瑞希に、彼はフッと笑い車を発進させた。

 その後は一度瑞希の部屋に寄って数日分の着替えなどのお泊まりセットを取りに行ってから、康弘の自宅へ向かう。

(さすがの康弘さんでも酔っ払いを抱く気持ちにはならないだろうし、警戒する必要はないかな)

 この状態で反論しても論破されそうな気がしたので、そう自分に言い聞かせて大人しく彼について行くことにした。
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