お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「は……い?」

 目が点になる。今の話のどこをどう受け止めたら、そういう言葉が出てくるのか……。理解ができない。
 瑞希が頭をかかえると、露口が「まあ話を聞きなさい」と言って、瑞希に再度座るように促す。渋々座り直すと、彼が満足そうに笑った。

「断ることばかりに捉われていないで、もう少し物事を柔軟に考えてみませんか?」

(柔軟に……?)

 どういうことか分からず首を傾げると、彼がニヤリと笑う。その笑みになぜかゾワッとした。


「両親からの度重なる見合い攻撃を終わらせるためには結婚するしかありません。俺は忙しい。貴方も言ったように見合いなど時間の無駄だ。だからこそ、もう今回で見合いは終わらせると決めたんです。瑞希さん、結婚しましょう」
「……」

 呆れてものが言えない。
 確かに結婚すれば、見合いをしろとは言われないだろう。だが、それはあまりにも暴論だ。むちゃくちゃだ。

 瑞希は話にならないと肩を竦めた。

「だったら、その考え方に賛同してくれる人をお見合いで探せばどうですか? 私は無理なので」
「何度も言わせないでください。見合いはもうしない」
「……はぁっ、それは貴方の都合でしょ。私に押しつけないでください。大体、こんな一回で何が分かるというのよ……。もし私が甘やかされて育った驕慢なお嬢様だったらどうするんですか? そんな女でも結婚したいんですか?」
「薬学部を六年。大学院を四年。そして就職して創薬研究者として日々頑張っていると聞いています。そんな人がただ甘やかされたお嬢様だとは俺は思いません。それに製薬会社の社長として研究者を見る目くらいはある。君は俺が求める妻に相応しい」
「研究者を見る目はあっても、結婚相手を見る目はなさそうですね」

 見定めるような目で見てくる居心地の悪さに瑞希は再度立ち上がり、絶対零度の眼差しで睨みつける。

「私は絶対に無理です。結婚なんてしませんから、ほかを当たってください!」

 瑞希は露口にそう言い捨て、一目散にレストランから逃亡した。
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