お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

康弘のマンション

「どうぞ」
「お邪魔します……」

 康弘のマンションに着き、玄関のドアを開けてくれる彼に軽く頭を下げながら、おそるおそる足を踏み入れる。

(わぁ、広い……!)

 好きなように見ていいと言った彼の言葉に甘えて、きょろきょろと室内を見てまわる。リビングに入ると、景色がよく見える大きな窓があった。

「綺麗な景色……。それにゆったりとしていて寛げそうなリビングですね」
「気に入りましたか?」
「はい」

 頷くと康弘が嬉しそうに笑う。
 つられて笑い、「次はどこを見ようかな」と独り言ちながら、リビングから見えるドアに近づいた。

「ここは?」
「そこは書斎です」

 ドアを開けると、天井まで届く本棚が設置されており、経営学や薬学などの幅広い専門書がぎっちり詰まっていた。化粧品の成分辞典や美容関連の本などもあって、彼がとても勉強していることが窺える。

「すごいですね」
「読書は好きなんですよ。業務内容をチェックしたり経営戦略を立てたりしている時以外は、本ばかり読んでいます」

(仕事ばっかりじゃないの……)

 本棚に並べられている本はすべて仕事に関係するものばかりだ。自分も仕事好きではあるが、それ以上の仕事好きに瑞希は顔を引き攣らせた。

「康弘さんは……家でくつろぐことはないんですか?」
「ありますよ」

(本当かしら?)

 ニコリと微笑んで瑞希の荷物を持ってスタスタとリビングに戻っていく彼の背中を訝しげに見ながら追いかけた。
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