お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
 ――康弘の家は都心の一等地に立つ超高級マンションだった。ワンフロアに一邸のせいか部屋数も多い。会社にも近くセキュリティ面は万全かもしれないが、如何せん一人で住むには広すぎるように思う。

(康弘さんはここに一人で寂しくないのかな……)

 だから仕事をしていないと落ち着かないのかもしれないと、瑞希は少し心が痛くなった。


「……広いですね」
「ええ。ここは祖父に譲ってもらったのですが一人暮らしには広すぎるので、ぜひ瑞希さんが来てくれると嬉しいです。部屋も余っていますしね」
「そうですね……」

 自分が引っ越してきたら彼は寂しくなくなるのだろうかと、対面キッチンに入っていく彼をジッと見つめる。

(一年……お互い努力するって決めたんだし、この一年でこのお家を賑やかにしてあげようかな)

 ちょっと前までは同棲なんて……と思ってたのに、今は前向きに考えられている自分がいる。瑞希はそんな自分に気づいて苦笑しながらソファーに腰掛けた。


「瑞希さん、何か飲みたいものはありますか?」
「あ、じゃあ、ビタミンが摂れるようなものはありますか?」

 キッチンから声をかけてくれる康弘に要望を伝えると、彼が申し訳なさそうに自社製品のビタミンドリンクを持って戻ってくる。

「こんなものしかないのですが……」
「充分です。ありがとうございます。ビタミンはアルコールの分解を手伝ってくれるから飲んでおこうかなと思って……」

 お礼を言いゴグゴクと飲む。彼は安堵の表情を浮かべながらテーブルの上にルイボスティーとお菓子を用意してくれた。そのお菓子を見て、はたと動きを止める。
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