お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

初めての夜

(ほ、本当にするの……? 本気?)

 シャワーを浴びて出てくると寝室で待っているように言われてしまい、ドキドキがおさまらない。
 瑞希はジッとクイーンサイズのベッドを見つめた。二人が寝ても余裕の広さが余計に緊張を煽る。

(はぁ、本当にどうしよう)

 ごろんとベッドに倒れ込み大きな溜息をつく。いつのまにか酔いがどこかにいってしまい、今は悲しいくらいに頭がハッキリしている。

(康弘さん……私のこと気に入ってくれているみたいだけど……)

 愛を育もうと言った言葉どおり二人はまだ愛し合えていない。今はお互いをよく知るための時間だ……。それなのにセックスなんてしていいのだろうか。

「一応婚約中だから……問題はないんだろうけど……」

 でも、だって、というような言い訳が、先ほどから頭の中に浮かんでは消えていく。

 瑞希は頭をかかえてベッドの上をごろごろと転がった。

「ああもう。わけ分かんない」

 見合いをすることを決めたのも自分。一年の試用期間を置くことを決めたのも、一緒に住むことを決めたのも自分だ。

 それなのに今日までの間、康弘という荒波に押し流されている気分で戸惑いのほうが大きい。

(往生際が悪いわよ、私。頑張らなきゃ……!)

 そうは言っても怖いものは怖いのだ。正直、怖気づいているし心臓が口から出てきそうなくらい緊張もしている。
< 54 / 118 >

この作品をシェア

pagetop