お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「俺はこういうのも大切だと考えています。この一年、心だけじゃなく体でも触れ合いたい。そう思うのはいけないことですか?」
「~~~っ。わ、分からないです。でも貴方にキスをされると頭の中がふわふわしてきて……つい受け入れてしまいそうになるから嫌ではないんだと思います。け、けど、まだ出会ってそんなに時間経ってないのに……。康弘さん、お願いだからキスしないでください。冷静に考えられなくなっちゃう……」
「嫌じゃないなら今は俺のキスを理由にして流されてください。時間なんて関係ありません。俺は瑞希さんが気に入りました。貴方となら共に生きていくのも悪くないと思えたんです。瑞希さん、もちろんベッドの中以外でも……どんな時でも貴方に尽くすと約束します。だから、怖がらないで」

 返事をする間もなくまた唇が重なり合った。抱き締められて距離が狭まると彼の体温をリアルに感じ取ってしまい、くらくらした。

(眩暈がしそう……)

 二人とも湯上がりなせいか同じ匂いがする。康弘のを借りたのだから当たり前だが、それが余計に鼓動を加速させた。瑞希は彼の香りに包まれて、きつく目を閉じた。

「……んっ、ふぁっ」

 口の中に入ってきた康弘の舌が瑞希の口内をうごめく。舌のつけ根から先までを舐め上げ、軽く吸われると思考が濁ってくる。
 二人の唾液が混ざり合う淫らな水音が鼓膜を揺らして、瑞希は彼の二の腕をぎゅっと掴んだ。

「んんっ……!」

 唇が離れたと思ったら、また深く重なる。瑞希が身を捩っても離してくれない。上顎を舐り、口内を蹂躙してくる彼の噛みつくようなキスに息が上がった。

 婚約者とはいえ、まだ好きでもない男の人にキスをされているのに、彼の舌や手を気持ちいいと思ってしまう。そんな淫らな自分がいたことに驚きつつ、瑞希は覚悟を決めて彼の背中に手を回した。交わす二人の吐息がやけに熱い。


「ん……ぁっ」

 瑞希が観念したのが分かったのか、彼はようやく瑞希の唇を解放してくれた。うまく息ができなくて荒い呼吸を繰り返していると、康弘がコツンと額をあわせてくる。

「さて、どうしますか? 無理強いはしません。貴方が決めてください」
「……っ、きょ、今日は康弘さんに流されてあげます……」

 今さらその聞き方はずるい。
 もう嫌だと言えるわけがないのにと、瑞希は困ったように彼を見つめた。

「いい子ですね。では、今宵は共に溺れましょうか」
「……っ」
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