お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

息の詰まるエレベーター

「――で、血相変えて逃げてきたと……」
「ちょっと笑いごとじゃないから」
「ごめんごめん。だから、今日すっぴんなのね。バレるのが怖いんだ」

 見合いの翌日――瑞希はいつもどおりの時間に出社した。昨日の今日なので休みたかったが社長と平社員が遭遇する確率はゼロに近いと信じて、足取り重く会社に来たのだ。

(どうしてお見合いを日曜日にしたのよ。せめて土曜日だったら……丸一日ワンクッションが置けたのに)

 そうすれば露口も瑞希の顔を忘れてくれたかもしれない。そんなあり得ないことを考えながら、肩を震わせて笑っている友人の相馬(そうま)知紗(ちさ)をじろりと睨む。
 彼女とは就職してからの付き合いだが、とても気が合う友人だ。良い知恵が欲しくて相談したのに笑うなんて酷いと思う。

「そりゃ怖いわよ。社長……あんまりいい噂聞かないし……。昨日はメイクが濃いめだったから、すっぴんならさすがにバレないと思ってメイクをするのやめたの。ねぇ、大丈夫よね?」

 完璧主義で使えないと判断した人間への切り捨て方が容赦がないという噂をよく聞く。嘘か本当かは知らないが、そんな人に目をつけられたくない。

(うちの会社……能力主義なところあるから噂は本当かも……)

 瑞希が縋るように知紗の白衣を掴むと、彼女が肩を竦める。
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