お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「腰が立たないまでするとかたまに聞くけど……経験してみるとちょっと困るかも……」

 すごく上手くて気持ち良かったが、絶倫すぎるのは今後の仕事に響く恐れがある。至急、話し合わなければならない。

「私に体力がないせいもあるけど、有り余りすぎてるのもどうかと思う……ん?」

 独り言ちながら食べていると、インターホンが鳴って顔をモニターのほうに向ける。

(あれ? お客様? 来客の予定があるなんて聞いていなかったけど……)

 瑞希は訝しげに玄関に続く廊下を見つめた。だが、このマンションはコンシェルジュが常駐しているので、変な人は入れないはずだ。


(ってことは、やっぱり康弘さんのお客様よね? えー、どうしよう)

 康弘に連絡しなければとスマートフォンを操作しながらモニターのほうに近づくと、見知った顔が映っていて瑞希は小さく目を見張った。

「お兄様?」

 そこには兄の裕希(ひろき)がいた。瑞希が慌てて玄関を飛び出すと、兄が部下らしい人と一緒に柔和な表情を浮かべて立っていた。久しぶりに会う兄に嬉しくなって抱きつくと受け止めて頭を撫でてくれる。


「まだパジャマ? 瑞希はお寝坊さんだな」
「こ、これは昨日寝るのが遅かったから……そ、それより急にどうしたの?」

 パジャマ姿を指摘されて頬を赤らめる。慌てて話題を変えると、兄の表情が曇った。

「それはこっちのセリフだよ。見合いをしてまだそんなに経っていないのに同棲って何考えてるの?」
「そ、それは、成り行きというか……人生のビッグウェーブに流され中というか……」
「何それ?」

 瑞希が目を逸らしてごにょごにょと口籠ると兄が眉根をよせる。彼は「まあいいよ」と言ってから一緒に来ていた人に荷物を部屋に運び入れるように指示を出しはじめた。兄の顔と運び込まれていく荷物を交互に見る。
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