お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「ううん。これは私が自分で決めたことなの。それに会ったばかりの人じゃなくて、私が働いている会社の社長だから大丈夫よ」

 逃げ回っていた時なら、兄の提案を渡りに船とばかりに受け入れただろうが、今は違う。ちゃんと自分の意思でここにいるのだ。

「は? つまり勤務先の社長だから拒否しづらいってことだよね? だからさっき流され中って……」
「ち、違う。さっきは言い方が悪かったわ、ごめんなさい。彼、とても優しいの。ちゃんと私の話も聞いてくれるし、考えてもくれるから無理矢理とかではないの……」

 怒りをあらわにした兄を慌てて宥める。両者が納得した上だと伝えると、彼が小さく息をついた。その表情はとても不満げだ。

「……それなら構わないけど、嫌なことがあったらすぐに帰ってくるんだよ。瑞希まで政略結婚することないから」
「ありがとう。でもパパやママだって私のこと思ってくれてのことだったのよ。過去に失敗して以来仕事一筋だったでしょ……。だから、めちゃくちゃ心配かけてたみたい。ねぇ、そんな顔しないでよ。本当にちゃんと二人で話し合って決めたから……。もしそれで失敗したら、その時は私の責任よ。誰のせいでもない」
「まあ確かにその点は僕も心配してたけど……だからって普通、勤務先の社長と見合いさせるかな。どう考えても断りづらいでしょ。本当にめちゃくちゃなんだから、あの人たちは」

 嘆息する兄に、あははと笑って誤魔化す。そこに関しては最初瑞希も憤慨したので、正直なところ何も言えない。
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