お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「俺は兄弟がいないので、そんなにも仲が良いなんて羨ましいです」

(それに瑞希から度が過ぎていると言われるのも羨ましい)

 兄だから当たり前かもしれないが、それだけ彼の愛情を信じている証でもある。

(俺に対しても無条件に信じさせて溺れさせたい……)

 ふと湧いた感情に自分でも驚いた。ゆっくり愛を育みたいと言いながら、彼女がたとえ兄だとしても――ほかの男の前で自分の知らない一面を見せたことに嫉妬したのだ。


「そう? なら、今後は僕のこと義理の兄として慕ってくれていいよ。君とは是非仲良くしたい」
「ありが……」
「但し、テストにクリアできたらね」

(テスト?)

 康弘の礼を遮り微笑んだ彼の表情(かお)に何やら背筋が寒くなる。すると、ニコリと笑った彼が康弘に封筒を渡し、耳打ちしてきた。

(え……)

「それは本当ですか?」
「本当だよ。詳しいことはその中を確認してくれれば分かるから」

 思いがけず知らされたことに愕然としていると、瑞希が顔を覗き込んできた。彼女はとても不満げな顔をしている。

「テストって何ですか? 変なことなら断ってくださいね」
「変なことじゃないよ。瑞希を託すに相応しいかちゃんと確認しないと。じゃあ、あとはよろしくね」

 そう言ってにこやかに去っていく彼の後ろ姿を見送りながら、渡された封筒を握り締めた。

(やはり至急、処さなければ……)
< 66 / 118 >

この作品をシェア

pagetop