お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
 ***

「はあぁ~っ」

 週明けの月曜日。瑞希は重く暗い溜息をついて、研究室に入った。ちなみに会社までは康弘と一緒に来た。別々に行こうと言ったが聞いてくれなかったのだ。

(はぁ……結局あのあと何も聞けなかったな)

 康弘が帰ってきたのは深夜だったので、疲れている彼に何も聞けず、翌日は翌日でまた仕事があるからと市岡に連れて行かれてしまい話どころではなかったのだ。二日あったはずの休日で、ちゃんと話せないというのは問題だと思う。

(今度、市岡さんにもう少し休めるようにスケジュールの調整をしてくださいって言わなきゃ)

 兄からのテスト云々の前にこれでは倒れてしまう。
 瑞希が不満顔でパソコンを起動させると、先に来ていた知紗が近寄ってきた。


「おはよう。金曜日は大丈夫だった?」
「おはよう……。うん、大丈夫よ。この前はありがとう」
「そのわりには浮かない顔をしてるわね。もしかして飲みすぎだって叱られたの?」

 途端、顔色が青くなった彼女に首を横に振る。

「違うわ。やすひ……いえ、社長が土曜日も日曜日も働き詰めだったからちょっと心配してたの。社員の働き方を改革しても自分が一人ブラック企業していたら意味ないと思わない? 本当に困ったものだわ……って何よ」

 肩を震わせて笑い出した知紗をじろりと睨む。すると、彼女が瑞希の肩に手を置いて、ニヤニヤとした笑みを向けてきた。

「すっかり奥さんじゃないの。やっと素直になったのね」
「別に私は最初から自分の気持ちに素直よ」
「……あんた、婚約までしておいてまだそんなこと言ってるの? 往生際が悪いわよ。まさか婚約中に難癖つけて別れるつもりとかじゃないわよね?」

(難癖?)

 知紗の言葉にギョッとする。それでは瑞希がひどい女ではないかと嘆息した。
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