お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「そんなことしないわよ。一応この婚約期間中は前向きに彼を知っていきたいと思っているわ……。その結果、どうしても合わないなら別れることもあるかもしれないけど、敢えて粗探しをしようとかそんなことは思っていないわ」
「じゃあ、そんな顔をせずに結婚生活の予行演習を満喫すればいいじゃない」
事もなげに言い放つ知紗に大仰な溜息をつく。眉間に皺をよせながらパソコンを操作していると、知紗が瑞希を肘でつついてきた。
「過去を忘れて好きになってあげなさいよ。社長、優しいでしょ」
「それはそうだけど……」
確かに康弘はすごく優しい。いつだって瑞希を大切に扱ってくれる。それが分かっているから彼を拒みきれないのだ。
(噂しか知らなかった時は怖くてたまらなかったのに、本当の彼を知ってしまったら拒絶ができなくなるなんて、私ってチョロいわよね……)
だから過去に泣く羽目になったと分かっているのに、結局流されやすいところは変わっていない。
瑞希が過去を思い出して陰鬱な気持ちになると、隣で知紗が明るい声を出した。
「冷静に考えてスペックは高いし、仕事への理解も高いわ。仕事で遅くなっても文句なんて言わずに応援してくれるだろうし。私は社長以上の人なんていないと思うけど」
「それは雇い主だから当然……」
「馬鹿。現実はその当然がまかり通らないことのほうが多いわよ。社長が瑞希のことを考えて理解しようと努めてくれているからこそ、うまくいっているんじゃない。感謝しなさい」
「うん、そうね……」
知紗の猛攻撃に気圧され、つい頷いてしまったが、瑞希は違和感を感じてはたと動きを止めた。
(なんかおかしくない?)
元々観念しろとうるさかったが、どうしてこんなにも彼女が康弘を褒めるのか……
訝しげに知紗を睨むと彼女がへらっと笑う。
「ねぇ、貴方。いくらで社長に心を売り渡したの?」
「へ? 何それ。人聞き悪いわね。お金で靡いたりなんてしないわ。親友の幸せを思ってこそ、応援しているんじゃないの」
「……」
「きょ、協力したら市岡さんとの仲をとり持ってくれるんだって……。ほら彼、とてもかっこいいでしょ! 私の好みなのよね。あと、社食の食べ放題権ももらったわ」
誤魔化すように笑い後退っていく彼女の腕を掴むと、彼女が上目遣いで見つめてきた。
「じゃあ、そんな顔をせずに結婚生活の予行演習を満喫すればいいじゃない」
事もなげに言い放つ知紗に大仰な溜息をつく。眉間に皺をよせながらパソコンを操作していると、知紗が瑞希を肘でつついてきた。
「過去を忘れて好きになってあげなさいよ。社長、優しいでしょ」
「それはそうだけど……」
確かに康弘はすごく優しい。いつだって瑞希を大切に扱ってくれる。それが分かっているから彼を拒みきれないのだ。
(噂しか知らなかった時は怖くてたまらなかったのに、本当の彼を知ってしまったら拒絶ができなくなるなんて、私ってチョロいわよね……)
だから過去に泣く羽目になったと分かっているのに、結局流されやすいところは変わっていない。
瑞希が過去を思い出して陰鬱な気持ちになると、隣で知紗が明るい声を出した。
「冷静に考えてスペックは高いし、仕事への理解も高いわ。仕事で遅くなっても文句なんて言わずに応援してくれるだろうし。私は社長以上の人なんていないと思うけど」
「それは雇い主だから当然……」
「馬鹿。現実はその当然がまかり通らないことのほうが多いわよ。社長が瑞希のことを考えて理解しようと努めてくれているからこそ、うまくいっているんじゃない。感謝しなさい」
「うん、そうね……」
知紗の猛攻撃に気圧され、つい頷いてしまったが、瑞希は違和感を感じてはたと動きを止めた。
(なんかおかしくない?)
元々観念しろとうるさかったが、どうしてこんなにも彼女が康弘を褒めるのか……
訝しげに知紗を睨むと彼女がへらっと笑う。
「ねぇ、貴方。いくらで社長に心を売り渡したの?」
「へ? 何それ。人聞き悪いわね。お金で靡いたりなんてしないわ。親友の幸せを思ってこそ、応援しているんじゃないの」
「……」
「きょ、協力したら市岡さんとの仲をとり持ってくれるんだって……。ほら彼、とてもかっこいいでしょ! 私の好みなのよね。あと、社食の食べ放題権ももらったわ」
誤魔化すように笑い後退っていく彼女の腕を掴むと、彼女が上目遣いで見つめてきた。