お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「そんな可愛い顔したって駄目だからね!」
「だってうちの会社のご飯美味しいし昼食代がこれから浮くって考えたらすごく大きいじゃない!」
「やっぱりお金で靡いているんじゃないのよ!」
「社食だけじゃなくて……市岡さんがとても素敵だからつい……。でも私だって本当に駄目な人になら協力したりしないわよ。社長にだったら瑞希を任せられると思ったから手伝うことにしたのよ。ね、瑞希も私の恋が上手くいったら嬉しいでしょ」

(……)

 頭が痛い。どんどん周りを自分の味方にしていくところはさすがだが、やはり許せないものがある。瑞希はぐっと拳を握り込んだ。

「それに社長が忙しいってことは秘書である市岡さんも忙しいでしょ。彼らの仕事量を減らすのは私も大賛成よ。協力するわ」
「はいはい。休日まで忙しいとデートに誘えないものね」
「それだけじゃないわよ。本気で二人の体を心配してるの」

 無邪気に笑う彼女に嘆息する。少し腹は立つが、なぜか知紗なら仕方がないと思ってしまうから不思議だ。すると、知紗が「あ!」と声を出した。

「何? 急に大きな声を出したらびっくりするじゃない」
「社長の話ですっかり忘れてたわ。昨日、瑞希と同じ大学だった友達と会ったんだけど、瑞希の元カレって人があんたを探し回ってるらしいの」
「え? なんで今さら?」
「さぁ。こんな話を聞くのも嫌だって分かってるけど、真偽はともかくとして念のために康弘さんに相談しておいたほうがいいと思うわ」
「うん。そうする……」

 あんなにも手ひどく人の想いを踏み躙っておいて、今さら何の用だと思いながら、瑞希は痛くなった胸元をぎゅっと掴んだ。
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