お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

瑞希の元交際相手①(康弘視点)

「社長。それで一体どうするつもりですか? 安東(あんどう)に接触をはかりますか?」
「いや、まだだ。まずは瑞希の意見を聞いてからでないと」
「僕はその必要はないと思います。心に変な波風を立てるだけですし、何よりこの男……クズですよ」

 怪訝な顔で言い放った市岡に、原田裕希より渡された報告書から顔を上げて、「それでもだ」と言い書類を机の上に置いた。


 瑞希の元交際相手――安東は清々しいほどのクズだった。社会人になって落ち着くどころか、さらに拍車がかかり泣かせた女は数知れず。その上、どこかで瑞希の実家について嗅ぎつけたのか……最近では原田ホールディングスの本社に『原田瑞希の恋人だ』と乗り込んでくる始末。

 なぜこんな男に、瑞希も含め世の女性たちは騙されるのか――ほとほと疑問だ。

(刺激を求めて悪い男に惹かれるものなのだろうか……)

 まったくもって理解ができないと康弘は嘆息した。

「こんなハシビロコウみたいな顔をした男のどこがいいんですかね」
「は? 何? ハシビロコウ?」

 突然頭上に降ってきた市岡の言葉に目を瞬かせる。どんな顔だったかとハシビロコウをスマートフォンで検索してみようとした時、瑞希からのメッセージを受信した。
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