お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「はぁ、過保護すぎるのも問題よね」

 これでは子供の時に戻った心持ちだ。
 康弘との話が終わり社長室を出たのと同時に詰まりそうだった息を大きく吐き出す。ぶつぶつ文句を言いながら一階に降りセキュリティゲートを抜けようとすると、誰かにぐいっと腕を引っ張られ壁際まで追い詰められる。

「きゃあっ!」
「しーっ! 今、受付で原田さんを出せって騒いでる人がいるんです。静かにしてください」
「え? 天崎さん……。騒いでる人って?」

 気になって物陰から覗こうとすると、また引っ張られる。天崎の話によると、ハシビロコウに似た人が受付にいるらしい。

(ハシビロコウに似た人ってどんなの? 誰?)

「鳥顔の知り合いなんていたかしら?」
「今出ていったらバレますよ。社長からアポなしの来客は絶対に通すなって指示が出てるんです。特に原田さんに会いにきた人はすべて社長の許可がなければ会えないことになってます」
「は?」

 驚きすぎて、思わず素っ頓狂な声が出る。
 瑞希は顔をしかめて、止めようとする天崎の手を振り払い物陰から覗いた。

(そんな指示を出したら、私と康弘さんが特別な関係って社内の皆にバレるじゃないのよ)


「どれどれ……って、安東先輩じゃないの」

(ハシビロコウ……)

 その瞬間、鳥と安東の顔が重なって噴き出してしまう。お腹を押さえてその場にうずくまると、天崎に肩を叩かれる。

「ちょっとバレるって言ってるでしょう! 笑うなら研究室か社長室で笑ってください」
「だ、だって……ハシビロコウだなんて……。よくそんなたとえを……無理、お腹痛い」
「私じゃないですよ。社長の秘書の市岡さんが言ってました」
「い、市岡さんってユーモアがあるのね。さすが知紗が好きになった人だわ」

(あー、涙出てきた)

 お腹をかかえて笑っていると、向こうがこちらに気づいたのか嬉しそうな顔で近寄ってきた。

「やば……」
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