お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「だから言ったでしょ!」

 それを見た天崎が、瑞希の背中をまた叩く。だが、このまま放置するわけにはいかないので、追い返すほうが得策だと考え立ち上がった。


「まあでも、これ以上は受付の子たちが可哀想だから対応するわ。もう受付から社長に連絡行ってると思うけど、天崎さんは社長呼んできて」
「で、でも……」
「大丈夫よ。こんなに人がたくさんいるところで何もできやしないわ」

(はぁっ、噂をすればなんとやらね……。それにしても突然会社に押しかけてきて会わせろだなんてマナーがなってないわね)

 そういう感じで実家の会社にも来ていたのかと思うと、げんなりしてくる。瑞希はなぜこのような男が好きだったんだろうと思いながら、渋る天崎をエレベーターに放り込んで、セキュリティゲートを抜けた。


「瑞希!」
「お久しぶりです、安東さん。大変申し訳ございませんが、ほかの方のご迷惑になるので、今日はお引き取り願えませんか? 後日、こちらからご連絡をさせていただくので、その時にお話をしましょう」

 拒絶されるとは微塵も思っていない満面の笑みでこちらに近寄ってくる安東に、ぺこりとお辞儀をして一歩下がる。すると、彼が突然土下座をした。その姿にギョッとする。

(え……!? な、何?)

「あの時は傷つけてごめん! ずっと探していたんだ。後日なんて嫌だよ。お願いだから今話を聞いてほしい!」
「ちょっと、声が大きいです。わ、分かりましたから……立ってください」

 急に大きな声で謝ってきたものだから、皆の視線が一気にこちらに向いてしまい、瑞希は変な汗が出てきてたじろいだ。が、安東は気にしていないのか、へらへらと笑っている。
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