お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
(もうやだ……。ただでさえ目立ってるのに土下座するなんて……)

 いい具合に苛立ちを誘う彼の笑顔に、心の中で舌打ちをする。

「だって、こうでもしないと話なんてしてくれないだろう? それより、そんなに周りが気になるなら外で話そう」
「は? いやでも……外は無理です」
「いいから! こっち来いよ」

 手首を掴まれ引っ張られてしまう。ずんずんと大股で歩く彼に足がもつれそうになりながらついて行くと、来客者用の駐車場だった。

(不思議ね。昔は手を掴まれればときめいたものだけど、今はなんとも思わないわ……)

 それより天崎のせいで顔に力を入れていないと笑ってしまいそうになる。

(目の前にいるのはハシビロコウだって言い聞かせたら、穏やかな気持ちで話が聞けるかしら? いえ、やめましょう。笑ってしまってそれどころじゃなくなるわ)

 安東は本気で謝る気はないらしく、とても偉そうに見える。瑞希は自分の車に腕を組みながら凭れかかっている安東をすまし顔で見た。
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