お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「――で、話ってなんですか?」
「聞かなくても分かるだろう? あの時は本当に悪かったと思ってるんだ。これからは瑞希一筋になるから、よりを戻そう」
「無理です。信用もできませんし、第一私もう貴方のこと好きじゃありません」
「なんだ? まだ拗ねてるのか? あれから何年経っていると思っているんだよ。相変わらず、お子様だな」
「拗ねていません。その言葉、そっくりそのままお返しします。もう八年経っているんですよ。いつまでも同じ気持ちのままだと思わないでください。それに私、今お付き合いしている人がいるんです。なので、実家にも勤務先にも二度と来ないでください」

 きっぱりと告げると安東が目を見張る。そして彼は「冷たい瑞希もいいな」と茶化すように笑って腰を抱いてきた。その手を思いっきりつねる。

「ふざけないでください。もう話すことはないので、帰ってください」
「待てよ」

 安東の隣をすり抜けて戻ろうとした時、左手首をガシッと掴まれる。痛みに顔をしかめると彼が瑞希の顔を殴った。突如として走った鋭い痛みと衝撃に体が飛んで、安東の車にぶつかる。

(痛……今……何が……)

「つねるなんて悪い子だな。じゃあ、付き合うのは別にいいや。それなら瑞希を誘拐してお前の両親から金もらうのが一番かな……」
「は? 何を言って……」
「しばらくの間、俺と遊んでいようか。久々の瑞希はどんな味がするかな」

 ニタリと笑う彼に背中に寒気が走る。そんなこと不可能に決まっているのに、会わないうちにそんなことも分からない痴れ者になってしまったんだろうかと、悲しくなった。

「そんなの無理です。誘拐なんてできるわけないでしょう!」

 瑞希が彼を睨みつけると無理矢理立たされて車に押し込まれそうになった。必死に暴れて抵抗すると、また殴られる。
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