お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「最低。思いどおりにならないからって殴るなんて……。どうしてそんな人になってしまったんですか? 昔の貴方はいい人ではなかったけど、ここまでひどくはありませんでした」
「お前が知らなかっただけで、元々こういう男だよ。出会った時のお前は世間知らずのお嬢様って感じで、そんなお嬢様を俺に夢中にさせるのが楽しかったよ。だが、まさか誰もが知ってるような大企業のお嬢様だったとはな。それが分かっていたら捨てなかったのに」

 嘲る彼に、唇を噛む。こんな男に一度でも心を許したことが、どうしても許せなかった。

 康弘なら絶対にこんなこと言わない。どんな時だって優しく寄り添ってくれる。たとえ数年会わなくても……
 瑞希は康弘や天崎の言うことをちゃんと聞いて、あそこで康弘が来るのを待ってから安東に声をかけるべきだったと後悔が胸に広がっていくのを感じ顔を俯けた。

 今どうしても康弘に会いたい。同じ会社内にいるのに、なぜかすごく遠く感じる。

(康弘さん、ごめんなさい)

 心の中で懺悔した時、目の前の安東が飛んで体がびくっと大きく跳ねる。

「え……」

 が、すぐに康弘が殴ったのだと分かって、体から力が抜けた。
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