お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「浅羽さん……どうしてここに?」
「そりゃいつだってお嬢様の側にいますよ。ボディーガードなんですから……」

 幼い頃からずっと側にいてくれたボディーガードの浅羽が体を支えてくれて、瑞希は揺れる目で彼を見た。

「お嬢様が嫌がるので大学に入ってから今まではずっと陰ながら護衛をしていました。ですが、露口社長が来るまで動くなとの指示を旦那様から受けていたので、助けるのが遅くなって本当に申し訳ございません。痛かったでしょう?」
「貴方たちが来てくれたから大丈夫よ」

 ずっと守られていたことを知り、胸が温かくなってくる。泣きそうになると、康弘が走ってきて抱き締めてくれた。

「瑞希!」
「康弘さん、ごめんなさい、勝手なことをしてごめんなさい……」

 来てくれて嬉しい。何度も謝りながら、震える手でぎゅっと康弘のジャケットを掴むと、彼が強く抱き締めてくれる。
 ほんの少し前まで一緒にお弁当を食べていたはずなのに、数時間ぶりにも感じて瑞希は縋るように抱きついた。

「謝らないでください。怖い思いをさせてしまいすみませんでした」
「いいえ、助けに来てくれたじゃないですか。それだけで充分です」

 康弘の胸にすり寄ると頭を撫でてくれる。彼は瑞希を抱き締めながら、警備員に取り押さえられている安東のほうに体を向けた。

「くそっ、何でこんなことになったんだ……。瑞希は俺に惚れてるはずなのに」
「勘違いをするな。君のような男に惚れてなどいない。瑞希は俺のものだ。――それからうちの病院で薬剤師として働いているようだが、君のことは本日付けで解雇する。二度と瑞希の前に姿を現すことは許さない」
「は?」

 顔を引き攣らせた安東に市岡が数枚の書類を渡す。それを見て、彼の顔が凍りついた。

(安東先輩って露口製薬グループの病院で働いてたんだ……)

 それなのによくこんな大それたことをしたものだと、瑞希は呆れた。
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