お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「嘘だろ……」
「嘘ではない。君は決して手を出してはならない人に手を出した。先に言っておくが、俺は諦めるということを知らないくらい執拗だ。今後また瑞希に害をなすようなことがあれば地獄の果てまで追いかけてでも潰してやるから覚悟しておけ」

(康弘さん……)

 そう言い放った康弘は噂どおりの冷徹社長そのものだった。その姿に頼もしさを感じていると、浅羽が救急セットを持ってきてくれたので、彼からの手当てを受ける。

「あとは病院でちゃんとした処置を受けてください」
「ありがとう。それより、安東先輩はどうなるの?」
「安東は色々な女性に暴力を振るったり金を騙し取ったりしていましたから、その件と今回のお嬢様への暴行をあわせて告訴する予定です。すでに被害女性数人から話を聞き被害届も出してもらっているので、もう逃げられないでしょうね」

(何人もの人に暴力を?)

 瑞希は安東に視線を向けた。軽薄なところはあったが誰かに暴力を振るったりお金を要求したりする人じゃなかったはずなのにと、悲しくなる。

(会わない間に何がここまで先輩を変えたのかしら……)

「瑞希、あとのことは市岡に任せて病院に行きますよ」
「はい」

 こくんと頷いて康弘の側に近寄ると、ぐっと引き寄せられ腰を抱かれる。安東の時はすごく嫌だったのに、康弘だととても安心した。
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