お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「謝るのは俺もです。社内であのようなことが起きることを想定していなかった。今後はもっと警備を強化します。本当にすみませんでした。……あと、基本的なことは顧問弁護士に任せるつもりなのですが、警察が一度は瑞希の話を聞きたいと言っているんですが、大丈夫ですか? 嫌なことを思い出させてしまうと思いますが……守りきれなくてすみません」
「そんなことないです! 康弘さんは充分なくらい守ってくれました。今回のことは私の落ち度なので、もう気にしないでください。警察の方にもちゃんとお話をします」

 康弘の声と表情に後悔が滲んでいて、瑞希の胸を締めつける。涙があふれてきて、康弘の腕の中で何度もごめんなさいと謝った。

「こ、これからは康弘さんの言うことを守ります。貴方の指示がある前に自分で動くようなことはしません……。もう心配かけたりしないと約束するから……康弘さんももう自分を責めないでください」
「瑞希……」
「康弘さん……私……」

 怖かったことをすべて忘れさせてほしい。瑞希は切実な願いを込めて康弘を見つめた。彼はそんな瑞希の心を汲みとってくれたのか、すぐに柔らかい眼差しに変わった。そして優しい手つきで頭を撫でてくれる。

(あたたかい……)

 彼の腕の中にいるだけで安心して涙が出てくる。瑞希が泣きながら笑うと、その涙を康弘が唇で掬ってくれる。そして、ゆっくりとお互いの唇が重なった。

 甘く食むようなキスは激しさなんてなかったが、とても熱くて心地良かった。何度も啄むようなキスを繰り返したあと名残惜しげに唇が離れる。

「瑞希、続きは帰れてからにしましょう。これ以上は我慢ができなくなるので」
「私……今日帰れるんですか?」
「いえ、今夜は念のために病院に泊まって明日退院予定です。帰ったら覚悟しておいてください。何も考えられないくらい俺でいっぱいにしてあげます」

(何も考えられないくらい……康弘さんで……)

 想像してしまって顔にボッと火がつく。照れ隠しのためにお互いの額をコツンと合わせて苦笑すると、また唇が重なり合った。

(康弘さん……)
< 86 / 118 >

この作品をシェア

pagetop