お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

自覚した想い

「ねちっこいのが好き……」

 すると、康弘が瑞希の言葉を復唱した。変な誤解をしていそうな彼を会長にバレないように肘でつつくと、康弘の視線がゆったりとこちらに向く。

「何ですか?」
「別に……。何か誤解をしていそうだなと……」
「誤解とは? 言葉のとおりに受け取っただけですが」
「……大好きとは言いましたが、簡単に諦めない姿勢がいいというだけで、すべてを肯定したわけではありませんから……」

 声をひそめて釘を刺すが康弘はどこ吹く風で、嬉しそうにしている。好きだと認めてしまったことで今後さらに容赦がなくなりそうに感じて、瑞希は両腕をさすった。

(ちょっと失敗したかも……歯止めがなくなった彼の行動を考えるだけで寒気がしそう)

 じろりと康弘を睨んだのと同時に、室内にノックの音が響く。


「誰かしら?」
「ご家族だと思いますよ。電話で報告をしたのですが、ひどく心配されていたので。瑞希はここで少し待っていてください。先にご家族に説明と謝罪をしてきます」
「謝罪だなんて……そんなの必要ありません。私が悪いのに……」
「ああ、二人とももういい。私が話してくるから、康弘は瑞希さんの側にいてやりなさい」

 会長が康弘の肩をポンと軽く叩いて病室を出て行った。閉まったドアを憂わしげな顔で見ていると、康弘が指を絡めてくる。

「帰ったら瑞希の好きなようにねちっこく抱いてあげるので元気を出してください」
「なっ……何言って……!」
「冗談です」

(じょ、冗談に聞こえなかったけど……)

 耳まで真っ赤にして康弘を睨むと、彼がフッと笑う。そして鼻を摘まれた。

「……っ」
「そんなに心配しなくても会長に任せておけば大丈夫です。瑞希は何の心配もせずに心身を休めることだけを考えてください」
「あ、ありがとうございます……」
「ふーん」
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