お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「きゃっ! び、びっくりした……! お兄様ったらいつ入ってきたの?」

 突然間に入ってきた兄に飛び上がる。兄は飄々と笑って瑞希を腕の中に閉じ込め頬ずりをした。

「今だよ。でも二人でいちゃつくのに忙しそうで気づいてくれなくて悲しかったな」
「いちゃついてなんていないわ」

 なんだか気まずくてぷいっと顔を背けると、兄が腫れていないほうの頬を指でつついた。その顔は楽しそうにも見えるが、悲しそうにも見える。

(お兄様?)

「恋に時間は関係ないと言うけど……見事に妹の心を掻っ攫われたな。これじゃ許すしかなくなるよね……」
「ということはテストは合格ですか?」
「そうだね。これからも瑞希のことをよろしく頼むよ。でも瑞希は鈍感だから、この気持ちが恋だとは気づいていないかもしれないけど」

 少し複雑そうな笑みを浮かべて茶化す兄に、康弘が礼を言いながら深々と頭を下げる。そんな二人を見ながら、自分の気持ちについて考えてみた。

 怖くてたまらない時、確かに康弘を恋しいと思った。どうしようもなく会いたかった。

(この気持ちが恋……)

「~~~っ!」

 途端に体温が上がってカッカしてくる。瑞希が俯くと、頭上から兄の笑い声が聞こえてきた。
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