お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

康弘の想い

「では帰りましょうか」
「は、はい……」

 朝になっても心臓が落ち着かず、むしろ康弘が側にいるだけでひどくなっている気がした。こんな状態で助手席なんて乗れるのだろうかと思いながらも、ドアを開けてくれると断れずにおずおずと座席に腰を下ろす。

(昨日の夢のせいで変にドキドキしちゃう……)

 退院前診察で不整脈を指摘されたらどうしようと真剣に悩んだくらい今心拍数も脈拍もおかしいのだ。瑞希は熱くなる頬を押さえて、はぁっと小さく溜息をついた。


 康弘が夢に出てきたことは初めてではないが、一緒に暮らすようになってからは自然と見なくなっていた。それがまさかあのような淫らな夢を見るなんて……

(何かあるのかな……以前、夢を見ていたのは不安からだと思うんだけど……)

 安東の事件がトリガーとなり、康弘に惹かれている心に気づけた。きっかけがないと、自分ですら自分の感情と上手に向き合えないのだから、もしかするとまだ気づけていない何かがあるのかもしれない。

(夢の原因になるような……感情……)

 瑞希は車窓から景色を眺めがら、自分の心を整理してみることにした。
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