お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「へ?」
「最初に言ったはずです。愛し合えばいいと――」

 彼は至極真面目な顔で瑞希を見据えた。心臓が早鐘を打って、顔に熱が集まってくる。何も言えない瑞希を見てフッと笑った彼は顔を正面に戻し、車を発進させた。

(そ、それって私のこと愛してるってこと? え? い、いつから?)

 瑞希はぎこちのない動きで下を向くと、上擦った声で彼に問いかけた。

「いつから私を……あ、愛して、くれていたんですか?」
「具体的にいつからとは言えないのですが、体を交えた以降……自分の中で急速に貴方を想う気持ちが強くなっていったように思います。好ましく思う気持ちが次第に独占欲へと変わり――どうしようもなく貴方を求め離したくないと考えるようになりました。それ以上に、悲しませたくない。幸せにしたい。喜んでほしい。笑っていてほしい。という感情が心を占有しました」
「康弘さん……」

 思っていた以上の気持ちが返ってきて、瑞希はうまく返事ができなかった。唇がわなないて涙がぽろぽろと頬をつたう。

「俺は死ぬ瞬間まで瑞希を愛し抜く自信と覚悟があります。必ず幸せにすると誓いますから、俺と添い遂げてください。結婚してくれますか?」
「う、うれ……しい。わ、私も、や、康弘……さんを、必ず……幸せに、しますっ」

 泣いているせいか、うまく言葉を紡げない。
 瑞希が言葉を詰まらせながら何度も首を縦に振ると、康弘が困り顔で笑う。

「泣かないでください。今は運転中なのでその涙を拭うことも抱き締めることもできないんですよ」
「だって……」
「瑞希……俺たちは出会ってから今日まで急ピッチに進みすぎています。可及的速やかに物事が進むのは悪いことではありませんが、瑞希の心が置いてけぼりになるのは本意ではありません。今後はゆっくりと二人の時間を持ちましょう。たくさんデートもしましょうね」
「はい」

 こくこくと頷く。
 泣くなと言うくせに康弘の言葉が瑞希を泣き止ませてくれないのだ。

 瑞希は抱きつきたい気持ちを抑えながら、康弘の横顔をジッと見つめた。運転しているので視線が絡むことはないが、彼がとても優しい表情をしているのは分かる。

(帰ったらいっぱい抱きつこう)
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