大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
 ***

「――で? まさか就職活動失敗して、うちでメイドのバイトしてるわけじゃないよな?」
「は? 違います!」

 部屋に入るなり、隆文が紅茶を淹れてくれる。変なものが入っていないか警戒していると、隆文がとても失礼なことを言った。

「じゃあ、なんで?」
「それは……。そ、そんなことより、隆文くんはどうして私だって分かったんですか? もう何年も会っていないのに……」
「会ってはいないけど悠斗から近況を聞いていたし、侑奈の写真も見せてもらっていた。それに悠斗の家に行くたびに、いつも遠巻きに俺のことを見てたじゃないか。少し会わないくらいで忘れたりしないよ」

(う……それは何かして来ないか心配で見張ってただけだもの。そ、それより、お兄様ったらひどい!)

 くつくつと笑っている隆文を見ながら、兄の裏切りにショックを受ける。

「毛を逆立てた子猫みたいな顔で俺のこと警戒してて最高に可愛かったよ」
「また馬鹿にして……」
「馬鹿になんてしてないよ。褒めてるんだから素直に受け取れ」

 唇を尖らせると、隆文が侑奈の額を指で弾く。額を押さえながら、彼をじっとりと睨んだ。

(そんなの無理だわ)

「でもばーさんが、しばらく実家に戻ってこいって言った意味が分かったよ。侑奈がいるからだったんだな」
「え? 今は実家に住んでいなかったんですか?」
「ああ。今はグループ企業の玲瓏(れいろう)薬品で社長を務めながら学んでいる最中なんだ。だから、会社の近くに住んでる」
「そうなんですね……。ごめんなさい。私のせいで……」

 侑奈(自分)のために呼びもどされたのなら悪いことをしたなとは思う。
 頭を下げると、隆文が首を横に振って侑奈の頭を撫でた。その衝撃に飛び退く。

「……っ!」
「そんなに怖がるなよ。あの時は悪かったよ。もう虐めたりしないから、そんなに怯えた顔をしないでくれ」
「……絶対に私が嫌がることをしないって約束してくれますか?」
「ああ、約束してやる。ほら、紅茶飲んで落ち着け。変なものなんて入れてないから」

(本当かな……)

 こわごわと口に運ぶと、侑奈好みの美味しい紅茶だった。
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