大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「ありがとうございます……」
「隆文ったら何も言っていないのね。あの子は本当に馬鹿なんだから」

 ハンカチで目尻に滲む涙を拭いていると、玲子が困ったように笑う。そして今隆文がしていることを教えてくれた。

「実はね、悠斗くんからお願いされて薬の開発中なのよ。随分と焦っているようだから、隆文は数人の研究員の子たちと研究所にこもっているわ」

(本当にお仕事が忙しかったんだ……)

 困ったものでしょうと笑う玲子に、侑奈は先ほどまでの愚かな考えを恥じた。隆文はいつだって侑奈のことを考えて大切にしてくれるのに侑奈は寂しい気持ちが勝って、隆文のことを信じきれていなかったのだ。

(私、最低だわ)


「でも嬉しいわ。隆文に会いたいと言って泣いてくれるなんて、少し前では考えられなかったもの。期待してもいいのかしら?」
「はい。私……隆文のこと好きです」

 玲子の問いかけにしっかりと自分の気持ちを伝えると、玲子がとても幸せそうに笑い、「ありがとう」と抱きしめてくれた。今度は彼女が涙ぐんでいる。

「侑奈ちゃんの将来の夢につけ込んだ自覚があっただけに、少し心配していたのよ。だけど、少しずつ歩み寄っていく貴方たちを見て、やっぱり間違っていなかったと思ってもいたの。でもその言葉を聞けるのはもう少し先だと思っていたからすごく嬉しいわ」
「私こそチャンスをいただき、ありがとうございます。玲子さんがあの日あの提案をしてくれなかったら、私は未だに隆文を誤解したままでした」

 ひしと抱き合い、玲子に何度も礼を伝える。玲子は何度も頭を撫でてくれた。
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