大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「侑奈ちゃん、隆文は篠原をライバル視しているだけで、別に侑奈ちゃんがその教授を慕っているからって嫌いになったりはしないわ」
「はい。会えない焦りと寂しさで冷静さを欠いてました。お恥ずかしいです」

 侑奈が頭を下げると、玲子が鞄の中から書類を取り出した。なんだろうと覗き込むと、渡してくれる。それを受け取り目を通した途端、息が止まりそうなくらい驚いた。

「これ……」

 書類は篠原教授についての調査報告書だった。
 そこには教授が不祥事を起こして大学を追放処分となったと書かれている。

(教授が生徒を薬の実験台に? 嘘……)

 手が震える。少し変わったところはあったが、それでも生徒に危害を加えるような人ではなかった。調査報告書のようなマッドサイエンティストなどではなかったはずだ。


「それから悠斗くんからお願いされている件がこれね。この毒に効く薬を今開発中なのよ」

 クリアファイルに入った薬物の成分分析の結果と神経毒との関連性、そしてそれが媚薬に混ぜられ夜の街に出回っているとの報告書。それらを見て侑奈は目を見張った。

「毒がばら撒かれているんですか!?」
「ええ。そのせいでうちだけじゃなく、都内中の病院もてんてこ舞いよ」
「……」

 教授の調査報告書のあとにこれを見せられたということは、もしかすると玲子は教授とこの毒物の件が関係あると考えているのだろうか。

 侑奈は眉間に皺を寄せて重く暗い息を吐いている玲子をチラリと見た。


「玲子さんはどうお考えですか?」
「彼を慕っている侑奈ちゃんには悪いけど、おそらく関わっていると思っているわ。K大で篠原が起こした事件の被害者の症状と、今回の事件の被害者の症状は似通っているもの」
「そうですか……」

 確かに似ている。違うところは飲酒と性行為の有無だが、直接アルコールや蛋白質を摂取させれば問題ないので、関連性がないと判断する材料にはならないだろう。

 おそらく教授は生徒で実験したあと夜の街にばら撒いたのだ。

(どうしてこんなことを……なぜ……)

 何が彼をここまで変えたのだろうか。
 侑奈がぎゅっと拳を握りしめると、玲子が背中をさすってくれる。
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