大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「会長。失礼しま……す……」

 虚しい笑いをこぼし応接室のドアをノックしてから開ける。すると、隆文の願いが叶ったのか、そこには祖母と侑奈、それから隆文と同期入社の女性研究員が一人いた。

「侑奈……!」
「隆文、お仕事中ごめんなさい。今日は話があってこちらにお邪魔させていただいたんです」

 話というのが気になったが、ペコリと会釈して近寄ってきてくれる侑奈を腕の中に閉じ込める。そのまま侑奈の頭頂部に鼻をうずめて香りを吸い込むと、侑奈がくすぐったいと笑った。逃げてしまった彼女を名残惜しげに見つめていると、祖母が呆れた目を向けてくる。

「貴方……社員への示しがつかないからやめてくれる? 変な噂が立ったらどうするのよ」
「大丈夫だよ。彼女は同期だし、俺の侑奈への気持ちも知っているから」

 隆文は入社時は本社で一般社員として学んでいた。今はグループ企業のほうを任せられたので、同期たちとは離れてしまったが今でもたまに連絡を取り合う仲なので特に問題はない。

 そう答えながら侑奈と一緒にソファーに腰掛けた途端、祖母が隆文の頭を扇子で叩く。だが、侑奈に会えた嬉しさで舞い上がっている隆文には痛くも痒くもなかった。
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