大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「――で、話って?」
「四條くん、本当に花秋さんったらすごいんですよ!」

 そう訊ねると祖母や侑奈ではなく、同期の女性――森岡(もりおか)が興奮気味に答えた。彼女は隆文の前に数枚の紙を広げ、ニコニコと話し始める。

「花秋さんの知識は本当に素晴らしいです。それに何より毒に耐性があるのが素晴らしい。この結果を見てください。媚薬や神経毒、そのどちらも花秋さんには効きませんでした」
「森岡さん、それは言っちゃ駄目!」

 侑奈が立ち上がり森岡の口を塞ぐ。彼女は失敗したという顔をし、祖母はあらあらと大して困っていなさそうな顔で笑った。三人の様子を見るに、侑奈があの媚薬を試したのは明白だった。

「どういうことだ? この媚薬は玲瓏薬品(うち)が任せられたはずだ。それなのになぜそっちでやってるんだ? しかも侑奈まで巻き込んで」

 隆文が声を荒らげ、応接室のテーブルを叩くと、ソファーに座り直そうとしていた侑奈の体が飛び上がる。が、祖母や森岡は一切動じていない。

「試すと言っても……性行為をしたわけじゃありません。服用後、蛋白質とアルコールを投与したんです。でも、まず興奮状態にも陥らなかったから、そもそも私には効かないと思います。ねぇ、隆文。これは有益な結果ですよね? 私の中にある毒の耐性が媚薬と神経毒の効果を打ち消したんです」
「ふざけるなっ!」
「ご、ごめんなさい。でも一体どんな毒なのか調べたくて」
「だからって自分の体で試す必要なんてないだろ! 最悪の事態を引き起こしたらどうするんだ!」

 薬の開発に夢中になって侑奈に気が回らなかった間にまさかこんな危険なことをされているとは思わなかった。
 隆文がきつい目で睨みつけると祖母と森岡が侑奈を庇う。
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