大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

話し合い

「……」

 とりあえず二人で話し合いなさいと応接室に二人きりにされて、侑奈は全身に力が入ったまま隆文の隣に座っていた。
 ちらりと隆文を盗み見るが、彼は侑奈から顔を背けたまま、こちらを向いてくれない。すごく機嫌が悪そうだ。

(やっぱり怒っているのよね?)

 自分の愚かな行いのせいで家族にたくさん迷惑や心配をかけてきた。
 祖父が女は必要以上に学ぶなと言うのも、実際は侑奈を心配しているのだと思う。侑奈が信用できないから……

(おじいさまはよく私を愚図だと言うけれど……それは私に何もさせないようにしているのよね)

 自分でも変な子供であったことは分かっている。自分に対して無頓着すぎて危なっかしい部分も理解している。だから、ちゃんと学んで正しい道を進みたいと考えたのだ。

(また失敗しちゃった……)


「隆文、ごめんなさい……。私……本当にどうしようもないくらい馬鹿で……。自分の体で実験したらいけないってことくらい分かってるのに、いざその場に直面するとこれくらいいいやって軽く考えちゃうんです。私は大切なものが欠落している救いようのない愚か者です。直すように頑張るから嫌いにならないで……」
「ちょっと待て! きつく怒ったのは悪かったが、卑屈になりすぎだ。侑奈が自分自身に対して無頓着なのは悲しいが、だからといってそこまでは思っていないし、俺が侑奈を嫌いになることは絶対にない」

 やっとこちらを見てくれた隆文はとても焦った表情をしている。彼の優しさに胸が苦しくなって、熱くなった目頭からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「侑奈……」
「ごめんなさい。泣かずに話さなきゃいけないのに……」

 止めようと思っても止まってくれず侑奈が目をぐしぐしと擦っていると、隆文に腰を引き寄せられる。彼の膝に乗る形になった侑奈は鼻を啜りながら、ぎゅっとしがみついた。よしよしと背中をさすられているうちに少しずつ涙が引っ込んでいく。

 久しぶりの隆文の匂いだ。こんなふうに抱き合えるのはいつぶりだろう。
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