大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「悠斗が侑奈は紅茶好きだって言ってたから、土産に買ってきたんだけど、どう? 口に合った?」
「はい。すごく美味しいです」
「じゃあ、これあげる」

 隆文はそう言ってイタリアの有名メーカーのダージリンとアールグレイの茶葉が入った缶を侑奈の膝の上にポンっと置いた。


「イタリアに出張だったんですね」
「うん。でも侑奈がいるって分かってたら早く仕事を切り上げて帰ってきたのに。早く言えよな」
「……」

 柔らかい雰囲気の隆文に唖然とする。先ほど部屋に強制連行されたときの意地悪な感じもなく、子供のときのようないじめっ子でもない。
 今の彼はどうやら侑奈が知っている『四條隆文』とは違うらしい。

 侑奈がまじまじと見ていると彼が苦笑する。


「それで? なんでメイドなんてしてるんだ?」
「それは……」

 侑奈は観念して、玲子の提案をすべて話すことにした。もし笑うようなら、玲子にきっぱりと「やっぱり無理だった」と断ろうと思って――

「つまり侑奈は研究がしたいから、うちの会社で働きたいのか。そのために俺と婚約……」
「で、でも、出来なくても雇ってもらえる予定ですから!」

 彼の言葉を慌てて遮る。すると、彼が侑奈の隣に移動してきた。

(は? なんで隣に座るの?)

 怪訝な視線を向けると、彼が侑奈の手を握る。

「俺は前向きに考えてもいいと思ってるよ」
「は?」
「どうせ断るつもりなんだろ。でもそれは許さないから」
「え、でも……」
「ちゃんと俺を知った上で無理なら仕方ないけど適当に断るなら、ぜってー雇ってやらない。言っとくけど、将来的には俺が四條製薬の社長だからな」

(う……)

 前言撤回。やっぱり何も変わってない。意地悪のままだ。
 侑奈は拳を握り込んで、恨めしそうに隆文を見た。
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