大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「それで教授のことなんですけど……」

 お互いたくさん泣いてキスしあったせいで、真面目な話に戻るのはなんとなく気恥ずかしい。だが、しなければならないので、侑奈は隆文の胸に凭れ掛かりながら話を切り出した。

「罪に問えないんですか? 少なくとも、大学での件は立証されているんでしょう?」
「俺だって捕まえてやりたいけど、大学での事件は握り潰されているんだ。大学側が表に出ることを嫌ったのか、それとも余程の権力者と懇意にしているのか……どちらかはまだ分からないが、この件は表に出ていない。正直実家の力がなかったら何も出てこなかっただろうな」

(そんな……)

 侑奈がショックを受けると、隆文がこちらを窺うように見てきた。

「いいのか? 尊敬していた教授だろ」
「だからこそ、ちゃんと罪を認めて償ってほしいんです」

 教育者が私情を優先して、本来導くべき生徒を危険にさらした。純粋に教授を慕う生徒の心を裏切ったのだ。それ相応の報いを受けてくれないと、皆の気持ちも侑奈の気持ちもおさまらない。

「教授は裏切った生徒や媚薬で傷つけた人たちに誠心誠意謝るべきですし、一生をかけて責任を取るべきです」
「なら、なおのこと何としてでも媚薬の件との関連性を見つけ出さなきゃな。そうすれば、大学での事件も白日の下に晒せる」
「はい! 私も全力で協力しますね!」

 ぐっと拳を握り込むと、隆文が侑奈の鼻を摘んだ。彼の膝の上から飛び退くと、彼が怖い顔でこちらを見てくる。

(どうしてそんな顔をするの?)
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