大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「……隆文ってロイヤルファミリーのくせに一般社員の人と仲良いですよね。大企業ってそういうのきっちり線引きされていそうなのに」
「ん? うちは一からきっちり学べが信条だから、そういうのは別に関係ないんだ。気を遣われることもなくはないけど、接してるうちにそういうのなくなっていったかな……」

 隆文はそう答えながら、またどこかに内線をかけていた。

(それってやっぱり隆文だからよね)

 彼は基本的に人懐っこいし面倒見もいい。だから最初は警戒していても皆自然と打ち解けていくのだろう。

 そんなことを考えていると、ノックの音が聞こえ女性警備員が入ってくる。その姿を目にとめて、侑奈はとても驚いた。

(隆文ったらわざわざ警備員さん呼んだの?)


「こちらのお客様を化粧室に案内してくれ」
「かしこまりました」

 お手洗いに行くだけなのに申し訳ないなと思いながら侑奈が会釈すると、女性警備員が深々とお辞儀を返してくれる。

「とても大切なお客様だから、失礼のないように。化粧室へ案内後も俺が戻るまでは彼女の側にいてくれ」
「承知いたしました」
「侑奈もトイレいったあとはこの部屋で大人しくしてるんだぞ。何かあったらすぐに連絡しろよな」
「はいはい。分かりましたから、さっさと玲子さんに報告してきてください」

 何度も念を押す隆文を応接室から追い出し、侑奈は女性警備員と一緒に化粧室へ向かった。

(私のせいなんだけど……過保護すぎて困るわ……)
< 113 / 127 >

この作品をシェア

pagetop